「永住許可制度の適正化」 — 永住許可の要件の法律への明記と在留資格取消事由の追加(令和6年〈2024年〉法律第60号、施行日は一部の規定を除き令和9年〈2027年〉4月1日)
一次出典は日本政府の発表(日本語)です。
これらの資料が扱う対象は「永住者」の在留資格であり、特別永住者は「今回の改正の対象ではありません」として、今回の改正およびこのQ&Aの対象ではないと明示されている。追加される取消事由は、改正後入管法第22条の4第1項第8号(正当な理由なく入管法上の義務を履行しないこと、支払義務があることを認識しながらあえて公租公課の支払をしないこと)と第9号(故意犯に限られた一定の重大な刑罰法令違反)である。うっかりした在留カードの不携帯や有効期間の更新申請の不履行、病気や失職等によるやむを得ない不払について、同じ資料は在留資格を取り消すことは想定していないと記し、過失運転致死傷・道路交通法違反・罰金刑については第9号の対象とならないと記しつつ、ただし永住者であっても1年を超える実刑に処せられた場合は罪名等にかかわらず退去強制事由に該当し退去強制される場合があると付け加える。取消事由に該当するか、該当する場合に「永住者」の在留資格を取り消すのか、それ以外の在留資格へ変更するのかは、法務大臣が入国審査官又は入国警備官による事実の調査と入国審査官による意見聴取を経て判断し、意見聴取において本人又は代理人は意見を述べ証拠を提出する機会が与えられ、処分に不服がある場合は取消訴訟等を提起することが可能だと記されている。取消事由に該当する場合であっても、引き続き本邦に在留することが適当でないと認める場合を除き、職権で永住者以外の在留資格(多くの場合「定住者」)へ変更され、その後、公的義務が適正に履行されていること等が確認されれば再度永住許可を受けることが可能だとする。公租公課の支払に困難がある場合は関係行政機関に、自分の在留資格について心配な点がある場合はFRESC(外国人在留支援センター)の窓口にも相談できるとQ&Aは記している。永住許可制度の適正化の規定がいつから適用されるのかについて、これらの資料は法律第60号全体の施行日(一部の規定を除き令和9年〈2027年〉4月1日)のみを案内しており、個別の施行日は記載されていない。
主な情報
| 根拠法令 | 令和6年(2024年)法律第60号「出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律」。令和6年6月14日に第213回通常国会で成立、同月21日公布 |
|---|---|
| 施行日 | 法律第60号について「一部の規定を除き、令和9年(2027年)4月1日」と案内。永住許可制度の適正化の規定の個別の施行日は、これらの資料(Q&A・PDF・改正の案内ページ)には記載されていない |
| 対象となる在留資格 | 「永住者」。特別永住者は「日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国の管理に関する特例法」に基づく地位で「今回の改正の対象ではありません」とされ、このQ&Aの対象でもない。帰化した場合は入管法に基づく在留管理の対象とならない |
| 要件の法律への明記(庁は「明確化」として案内) | 現行の要件「その者の永住が日本国の利益に合する」のうち、現在「永住許可に関するガイドライン」に記載されている「公的義務を適正に履行していること」を「この法律に規定する義務の遵守、公租公課の支払等」として法律に明記。庁は「新たな永住許可の要件を加えるものではなく、許可の要件を厳格化するものでもありません」と記載 |
| 追加される取消事由 — 第22条の4第1項第8号 | 入管法が規定する永住者が遵守すべき義務であって、退去強制事由として規定された義務ではないが義務の遵守が罰則によって担保されているものを「正当な理由なく」履行しないこと、及び「故意に公租公課の支払をしないこと」(支払義務があることを認識しながらあえて支払わないこと。例として、支払うべき公租公課があることを知り、支払能力があるにもかかわらず支払わない場合を想定)。「公租公課」は租税のほか社会保険料等の公的な負担金。うっかり在留カードを携帯しなかった場合・有効期間の更新申請をしなかった場合、病気や失職等、本人の帰責性を認めがたいやむを得ない不払は「取り消すことは想定していません」。該当する場合であっても、不納に至った経緯や督促等への対応状況等、個別具体的な事情に応じて判断 |
| 追加される取消事由 — 第22条の4第1項第9号 | 刑法の窃盗・詐欺・恐喝・殺人の罪や「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」の危険運転致死傷等「一定の重大な刑罰法令違反に限られており」、いずれも故意犯が対象で、拘禁刑に処せられたことが要件。過失運転致死傷、道路交通法違反、罰金刑は本号の対象ではない。ただし、永住者であっても1年を超える実刑に処せられた場合は、罪名等にかかわらず退去強制事由に該当し退去強制される場合がある |
| 該当した場合の取扱い(PDFの概要図とQ12) | PDFの概要図は「永住許可の要件を満たさなくなる場合」について、事実関係の慎重な調査を経て、①永住者の在留資格で引き続き在留(※入管法上の措置をしない)②他の在留資格(定住者)へ変更 →「再度永住許可を受けることが可能」(引き続き在留可能)③取消し(引き続き本邦に在留することが適当でないと認める場合)の三つの道筋を示す。③の「引き続き本邦に在留することが適当でないと認める場合」については、Q&AのQ12の注記(※)が、今後も公租公課を支払う意思がないことが明らかな場合、犯罪傾向が進んでいる場合を例に挙げて想定していると記す |
| 手続と不服 | 法務大臣が入国審査官又は入国警備官に事実の調査を行わせ、入国審査官に対象となる外国人からの意見聴取を行わせる。意見聴取において本人又は代理人は意見を述べ、証拠を提出する機会を持つ。職権による在留資格の変更や「永住者」の在留資格の取消処分に不服がある場合は、取消訴訟等を提起することが可能 |
| 改正法附則第25条(国会によって追加) | 第22条の4第1項のうち第8号に関する部分の適用に当たり、該当すると思料される外国人の従前の公租公課の支払状況及び現在の生活状況その他の状況に「十分配慮するものとする」と規定。庁はその趣旨を踏まえ、日本への定着性・生活状況等にも十分配慮して判断し、慎重に運用すると記載 |
最終確認:
出入国在留管理庁は「永住許可制度の適正化」として、永住許可の要件の明確化と在留資格取消事由の追加を案内している。根拠は、令和6年(2024年)6月14日に第213回通常国会で成立し同月21日に公布された令和6年法律第60号であり、この法律の施行日は「一部の規定を除き、令和9年(2027年)4月1日」と案内されている(永住関係の規定の個別の施行日は、これらの資料には記載されていない)。要件の「明確化」について庁は、現行入管法の「その者の永住が日本国の利益に合する」要件のうち、現在「永住許可に関するガイドライン」に記載されている「公的義務を適正に履行していること」を「この法律に規定する義務の遵守、公租公課の支払等」として法律に明記するものだと説明し、「新たな永住許可の要件を加えるものではなく、許可の要件を厳格化するものでもありません」と記している。追加される取消事由は、改正後入管法第22条の4第1項第8号(この法律に規定する義務を遵守しないこと、故意に公租公課の支払をしないこと)と第9号(一定の重大な刑罰法令違反)である。第8号についてQ&Aは「正当な理由なく」履行しないことをいうとしつつ、うっかり在留カードを携帯しなかった場合や在留カードの有効期間の更新申請をしなかった場合、病気や失職等、本人に帰責性があると認めがたく、やむを得ず公租公課を支払えない場合は「在留資格を取り消すことは想定していません」と記す。第9号は、刑法の窃盗・詐欺・恐喝・殺人の罪や危険運転致死傷等、一定の重大な刑罰法令違反に限られ、いずれも故意犯を対象としており、過失運転致死傷・道路交通法違反・罰金刑は対象ではないと記されている(ただし、永住者であっても1年を超える実刑に処せられた場合は、罪名等にかかわらず退去強制事由に該当し退去強制される場合があるとする)。取消事由に該当する場合であっても直ちに在留資格を取り消して出国させるのではなく、引き続き本邦に在留することが適当でないと認める場合を除き、法務大臣が職権で永住者以外の在留資格(多くの場合「定住者」)への変更を許可し、その後、公的義務が適正に履行されていること等が確認されれば再度永住許可を受けることが可能だと記されている。特別永住者は「今回の改正の対象ではありません」とされ、今回の改正およびこのQ&Aの対象ではない。
背景 — なぜこの改正なのか
根拠は、令和6年(2024年)6月14日に第213回通常国会で成立し同月21日に公布された「出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律」(令和6年法律第60号)である。同じ日に「出入国管理及び難民認定法等の一部を改正する法律」(令和6年法律第59号)も成立・公布されており、第59号の概要はマイナンバーカードと在留カードの一体化として案内され施行日は一部の規定を除き令和8年(2026年)6月14日、第60号の概要は「育成就労制度の創設等」として案内され施行日は一部の規定を除き令和9年(2027年)4月1日である。「永住許可制度の適正化について」(PDF)と「永住許可制度の適正化Q&A」は、この第60号の案内ページに掲載されている。 現行制度についてQ&Aは、「永住者」は入管法上の在留資格の一つで、他の在留資格と異なり活動と在留期間に制限がなく、そのため在留期間の更新のような在留審査の手続を受けないことになるが、在留資格取消制度・退去強制制度等、入管法に基づく在留管理の対象であると記す。現行の永住許可の要件は原則として(1)素行が善良であること(2)独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること(3)その者の永住が日本国の利益に合すること の三つであり、具体的な内容は「永住許可に関するガイドライン」で明らかにしているという。現行の取消事由としては、新しい住居地の届出をしなかった場合、虚偽の住居地を届け出た場合、不正な手段等により永住許可を受けた場合が挙げられ、永住者であっても1年を超える実刑に処せられた場合や薬物事犯で有罪判決を受けた場合等は退去強制され得ると記されている。PDF資料は「一定の要件」の脚注として「素行善良・独立生計・日本国の利益に合致(10年以上の在留、公的義務の履行など)」と記している。 趣旨について出入国在留管理庁は、永住許可の後は在留審査がないため、永住許可の時には満たしていた要件を許可後に満たさなくなる「悪質な場合」が一部にあり、在留状況が良好と評価できない永住者について適切な在留管理を行うためのものだと説明する。一方でQ&Aは「公租公課の不払が問題なのであれば、日本人と同様に督促や差押えで対応すれば十分であり、在留資格の取消しは永住者に対する過剰な措置ではないでしょうか」という質問項目(Q6)を設け、これに対して庁は「今般の措置は、公的義務を適正に履行せず、在留状況が良好とは評価できないような場合に適切な在留管理を行うことを目的とするものであって、過剰な措置であるとは考えていません」と記している。 また、Q&Aは改正法附則第25条が国会によって追加されたと記す。この条項は、新入管法第22条の4第1項のうち第8号に関する部分の適用に当たり、当該号に該当すると思料される外国人の従前の公租公課の支払状況及び現在の生活状況その他その外国人が置かれている状況に「十分配慮するものとする」と規定しており、庁はその趣旨を踏まえ、対象者の日本への定着性や生活状況等にも十分配慮して判断し、慎重に運用すると記している。
以下の要約は政府発表・一次出典に基づく事実整理であり、政策への評価や意見ではありません。
国レベルの制度に基づく整理です。市区町村により制度・運用が異なる場合がありますので、申請前に公式窓口でご確認ください。
よくある質問
公租公課を支払えないと、すぐに在留資格が取り消されるのですか?
Q&Aは第8号の「故意に公租公課の支払をしないこと」を、支払義務があることを認識しているにもかかわらずあえて支払わないことだと説明し、例として、支払うべき公租公課があることを知り、支払能力があるにもかかわらず支払わない場合を挙げる。他方で、病気や失職等、本人に帰責性があると認めがたく、やむを得ず支払えない場合は「在留資格を取り消すことは想定していません」と記す。また、取消事由に該当するとしても取消し等をするかどうかは、不納に至った経緯や督促等への永住者の対応状況といった個別具体的な事情に応じて判断するという。差押処分等により事後的に不納の状況が解消された場合については、徴収という目的が達成されたからといって必ずしも取消し等の対象とならないわけではないとしつつ、個別の事案の未納額・未納期間や支払に応じたか等、関係機関の措置への対応状況とともに、事後的に解消されたかどうかも考慮されると記されている。
在留カードをうっかり携帯しなかったり、有効期間の更新申請をしなかった場合も取消しの対象ですか?
第8号は「この法律に規定する義務を遵守せず」と「故意に公租公課の支払をしないこと」を取消事由として規定する。Q&Aは前者の文言について、入管法が規定する永住者が遵守すべき義務であって、退去強制事由として規定された義務ではないが義務の遵守が罰則によって担保されているものを「正当な理由なく」履行しないことをいうと説明する。そして、永住許可制度の適正化は、永住許可の後にその要件を満たさなくなった「一部の悪質な者」を対象とするものであり大多数の永住者を対象とするものではないため、例えばうっかり在留カードを携帯しなかった場合や在留カードの有効期間の更新申請をしなかった場合に在留資格を取り消すことは想定していないと記している。
交通事故や罰金刑も刑罰法令違反の取消事由に当たりますか?
Q&Aは、第9号に規定された刑罰法令違反が、刑法の窃盗・詐欺・恐喝・殺人の罪や自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律の危険運転致死傷等「一定の重大な刑罰法令違反に限られており」、いずれも故意犯を対象としていると記す。したがって、交通事故を起こして過失運転致死傷の罪で処罰された場合は本号の対象とならず、道路交通法は取消事由として規定された刑罰法令に含まれていないため道路交通法違反で処罰された場合もそもそも対象とならず、処罰の内容も拘禁刑に処せられたことが要件であるため罰金刑に処せられた場合も対象とならないという。ただし同じ項目は、永住者であっても1年を超える実刑に処せられた場合は、罪名等にかかわらず退去強制事由に該当し退去強制される場合があると付け加えている。
本人が対象になった場合、配偶者や子どもの在留資格はどうなりますか?
Q&Aは、在留資格の取消し又は変更の対象となるのは在留資格取消事由に該当する者のみであり、その対象者の家族であることを理由に取消しや「永住者」以外の在留資格への変更の対象となるものではないと記す。そのため、永住者の子どもの在留資格が「永住者」又は「永住者の配偶者等」である場合、その在留資格に影響はなく、配偶者の在留資格が「永住者」である場合も影響はない。ただし、配偶者の在留資格が「永住者の配偶者等」である場合は「定住者」等の在留資格へ変更することになると記されている。
どのような場合に入管庁へ通報されますか?市役所・区役所に住民税の相談に行っても通報されますか?
Q&Aは、改正後入管法第62条の2が、国又は地方公共団体の職員がその職務を遂行するに当たって在留資格取消事由に該当すると思料される外国人を知ったときはその旨を通報することができるとしているが、「その通報は義務ではありません」と記す。入管庁は、国・地方公共団体の職員が通報するかどうかを判断する際の参考となるよう、在留資格を取り消すことが想定される事例等についてのガイドラインを作成し公表する予定だとし、単に公租公課を支払うために関係機関へ相談に行った場合に通報を受けることは想定していないという。また、公租公課の支払に困難がある場合は関係行政機関に相談し、自分の在留資格について心配な点がある場合にはFRESCの窓口にも相談できると記されている。